17. 悪の仮面 Masks of Evil

作品について

このエピソードは「ヤング・インディ・ジョーンズ・クロニクルズ」の第23話として放映された「1918年 9月 イスタンブール」と、第28話として放映された「1918年 1月 トランシルバニア」を組み合わせ、1つのエピソードとして再編集した作品である。シリーズ再編後は基本的にタイムラインに沿った順番でチャプター番号が振られているが、チャプター16と17は例外であり、当初発表されていたタイムラインでは17の後半(トランシルバニア編)、16の前半(北イタリア編)、17の前半(イスタンブール編)の順となっている(モロッコ編は時期不明)。しかし、チャプター16の北イタリア編とモロッコ編が再編集の際の追加シーンによってスムーズに繋がっているため、間にイスタンブール編の入り込む余地がなく、時代設定に矛盾が生じてしまっている。劇中には何年何月かを表す描写が一切ないため、時代設定が変更されたと考えるべきだろう(これはチャプター13、14 などでも同様のことが起こっている)。

イスタンブール編、トランシルバニア編は共に海外でテレビ放映されたのみだが(トランシルバニア編はアメリカでは未放映)、チャプター17として再編集された後の作品がビデオ化されている(国内版は既に絶版)。

このエピソードで特筆すべき点は、ヤング・インディ・シリーズにおいて唯一、超常現象が描かれていることである。映画シリーズでは各クライマックスのシーンで派手な超常現象が描かれていたが、これまでのヤング・インディは極めて現実的な作品群だった。しかし、このエピソードに限っては魔力全開となっている。

なお、トランシルバニア編に含まれていた1990年代の老インディのセクションは再編集の際にすべてカットされており、イスタンブール編とトランシルバニア編を繋ぐシーンが新しく追加されている。

ストーリー

1918年 9月 イスタンブール Istanbul - September 1918

インディはスパイの小グループの一員としてトルコのイスタンブールに配属させられていた。彼らはそこでバルカン通信社という新聞社の支社を偽装し、諜報活動を行っていたのである。インディはニルス・アンダーソンという偽名で、スウェーデン人の新聞記者を装っていた。彼の任務はトルコ軍のムスタファ・ケマル・アタチュルク将軍と接触し、フランスとの単独講和の意思があるかどうかを確認することである。同時に、彼はパートナーの1人であるステファンと共に、この任務を達成できるかどうか、賭けを行っていたのだった。

イスタンブールでの任務の間、インディは孤児院で働くアメリカ人教師モリーと恋に落ちるが、彼はスパイであるという素性を彼女に隠し続けていた。ある日、孤児院で子供たちに話を聞かせていたインディは、孤児院の経営者ハリデ・エディブ女史がケマル将軍と面識のあることを知る。彼はさっそくトルコ国民の記事を書くため、将軍にインタビューしたいと彼女に頼むのだった。また、彼はその夜、モリーを特別な夕食に招待する。その席でインディはモリーに結婚を申し込み、彼女もそれを承諾した。しかし、彼には指輪を買う勇気はなく、代わりにブレスレットを贈ることになる。そしてその夜遅く、路地で連絡員と接触したインディは、火曜日に「赤い文書」が届くと聞かされるのだった。インディは計画を実行するにはそれでは遅すぎると告げるが、他に選択肢はなかったのだ。

翌日、インディはケマル将軍がインデビューに応じたことを知らされる。インタビューの間、彼は将軍にトルコとドイツの同盟について質問した。ケマルはドイツの目的とトルコのそれが異なっていることを表明し、それが不満であることを告げる。そこでインディがフランスとの単独講和への関心を尋ねると、ケマルは彼に不信感を抱き、そのような質問をする権限を持っているのかと尋ねるのだった。インディはそうであることを暗示する。ケマルはドアの向こうで部下が会話を聞いていることに気づき、このような申し出に興味はないと告げる。だが、彼は密かにもう一度インディと会う機会を設けると請合うのだった。

新聞社に戻ったインディは、彼らの連絡員が30分後に現われるというメッセージを受け取った。ステファンが注意しろと警告するなか、彼は急いで連絡員に会いに行く。だが、道路で待っていたインディは、路上で連絡員がトラックにはねられるところを目撃するのだった。インディは彼のところへ急ぐが、連絡員は死んでしまう。そして重要な文書の入ったカバンも持ち去られていた。インディは仲間を全員招集し、盗まれた文書が単独講和を求めるフランス側の条件を記したものであることを告げる。トルコ軍はスルタンに失望しており、ケマル将軍が単独講和に傾けば喜んで彼に従うだろう。だが、スルタンに忠実な人々が文書を手に入れれば、ケマルは反逆者となってしまうのだ。スパイたちの結論によると、文書の到着を知っていた人物は闇商人のベスカリだけだった。翌日、インディは連絡員と接触し、やはりベスカリが文書を持っていること知らされるが、彼にはそれをインディらに売るつもりはないという。ベスカリはドイツと取引をするつもりだったのだ。

インディとステファンは2人の仲間と共にベスカリのアパートへ向かった。だが、ベスカリは既に浴槽で溺死しており、居間の方から物音を聞きつけたインディも、ナイフを持った男に襲われ、腕を負傷してしまう。彼らは男を追って外へ飛び出し、街の屋根の上での追跡を開始した。やがてインディとステファンが文書を持った男を追い詰めると、男はベスカリを利用していたのはインディたちのグループ内にいる内通者だと告げる。彼は逃走を試みるが、ステファンによって殴られ、路上に転落して死んだのだった。その後、インディは本部で文書を再検討する会合を開くが、その内容は期待とは異なるものだった。それが誤った人間たちの手に渡れば、間違いなくケマルは反逆者の汚名を着せられるだろう。インディはグループの仲間たち全員を疑い、全員の背後関係を調べると告げる。そして彼は文書を秘密の場所に隠し、アパートへと戻るのだった。その夜、インディは不安を抱えたまま眠りにつく。すると、何者かが彼の部屋に侵入し、静かに捜索を開始した。だが、男は探し物を発見できず、アパートを去っていった。

翌朝、モリーがインディの部屋を訪れた。モリーは彼に腕の治療を行い、ベッドで寝ているよう指示する。また、夜に戻ってきたときには、夕食を作ってくれた。インディは心配するモリーに、闇市場の取材に深入りしすぎて腕を刺されたと言い訳する。そして、2人は結婚式について話し合うのだった。その後、モリーが夜を共に過ごすことを望んだため、翌朝、インディは彼女を孤児院まで見送ることになる。外は雨が降っていたため、インディは自分のコートを彼女に貸していた。その途中、彼らは占い師と出会い、モリーは2人の愛が永遠に続くかと質問する。占い師は続くだろうと答えるが、2人が立ち去った後、彼女はルーン文字の示すもう1つの結果に困惑するのだった。

その後、インディは事務所へと向かうが、すぐに何者かが尾行していることに気づいた。彼が振り向くと男はメモを差し出し、6時に例の場所へ出向くよう伝える。それはケマル将軍との面会の知らせだった。インディは隠し場所から文書を回収すると、行き先をステファンに知らせる。ステファンはインディが面会に行くことに反対するが、インディは出かけていった。彼はステファンに、自分の身に何かあれば、その後のことは引き継いでほしいと言い残す。ステファンはインディが信用している唯一の仲間だったのだ。

会合場所で、インディは2人のトルコ兵と会い、ケマル将軍のもとへ連れられていった。彼は将軍に文書を見せるが、それを読んだケマルは激怒する。その内容は彼が必要としていたものでも期待していたものでもなかったのだ。インディは改めてフランスとの交渉を提案するが、ケマルは拒絶し、彼は自分自身の条件で自由なトルコの実現という夢を達成すると告げる。インディはやむなくその場を立ち去るのだった。そして帰宅途中、彼は路上で仲間の諜報員の1人、サダラーに呼び止められる。彼は本部からの連絡で二重スパイの正体が判明したと告げるが、その名前を言う前に、背後から暗殺者に狙撃され、死亡するのだった。すぐに警察がやってきたため、インディはやむなくその場を立ち去る。彼はその後すぐに仲間を招集し、事実がはっきりするまでしばらくの間活動を停止すると言い渡す。仲間たちも本意をもらさず、それに従うのだった。

その後、モリーが激怒した状態で通信社を訪れた。エディブ女史がケマル将軍からインディがフランス軍の諜報員であるという手紙を受け取っており、彼女はその真偽を問い正しに来たのだ。インディはそれが事実であることを認め、嘘をついていたのはモリーを守るためだと釈明する。だが、彼女は理解しようとせず、その場に泣き崩れた。インディは、モリーを愛する気持ちだけは偽りではないと話すが、彼女は傷つき、裏切られたと感じていた。彼女は二度と会うつもりはないと告げ、立ち去ってしまう。だが、モリーは孤児院で再び想いを巡らし、その後、借りていたインディのコートと帽子を身に着けると、再び通信社へと向かうのだった。

一方、インディが1人で通信社に残っていると、突如としてドアに銃弾が撃ち込まれた。襲撃者はインディを探すが、彼は街路へと飛び出し、アパートへと急ぐ。インディも尾行されていることに気づいていた。そしてアパートに到着すると、彼は文書を燃やし、襲撃者を騙すためのダミー人形を用意する。インディはドアの死角に隠れながら、襲撃者がゆっくりと侵入し、ダミーに狙いを定めるのを聴いていた。だが、その直後に階下のドアが開き、インディのコートを着た人物が入ってきたのである。襲撃者はそれがインディだと思い込み、振り向いて銃弾を放った。だが、それはインディに会いに来たモリーだったのだ。インディは急いで現場に駆けつけ、ステファンが自分に向けて銃を構えているところを目撃する。インディは瞬間的に彼を射殺した。そして彼はモリーのもとへ走るが、既に彼女は死にかけていた。モリーは今でもインディを愛しており、結婚することを望んでいると告げる。しかしその直後、彼女はインディの腕の中で息を引き取るのだった。

その後、任務を終えたインディはフランス情報局の本部に呼ばれていた。上層部は二重スパイを片付けられたことに満足していたが、インディは彼らの人命を軽視する姿勢に不満を爆発させる。だが、命令に逆らうことはできず、インディには厄介払いともいえる次の任務が与えられるのだった。

1918年 1月 トランシルバニア Transylvania - January 1918

オーストリアの捕虜収容所が攻撃を受けた後、インディはこの一件に関わっているとされる分離主義の将軍を捜索するためルーマニアへと派遣された。そして彼のグループはトランシルバニアの奥地で古城を見つけ、そこで行方不明の兵士やスパイたちが様々な国籍の人々と一緒にいるところを発見する。だが、城から立ち去ろうとしたとき、インディたちの前に城主が姿を現した。彼らは次々と起こる超常現象を体験し、吸血鬼の城主が不死の兵士たちによる個人的な軍隊を作っていることを知る。やがてインディは吸血鬼ブラド公を滅ぼすことに成功し、彼の魔力によって蘇らされていた兵士たちの魂も解放された。彼らは安らかな眠りを得たのである。

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