13. 革命前夜のスパイ Adventures In The Secret Service

作品について

このエピソードは「ヤング・インディ・ジョーンズ・クロニクルズ」の第7話として放映された「1917年 3月 オーストリア」と、第13話として放映された「1917年 7月 ペトログラード」を組み合わせ、1つのエピソードとして再編集した作品である。シリーズ再編後は基本的にタイムラインに沿った順番でチャプター番号が振られているが、チャプター13と14は例外であり、当初発表されていたタイムラインでは13の前半(オーストリア編)、14の前半(バルセロナ編)、13の後半(ペトログラード編)、14の後半(プラハ編)の順となっている。しかし、本エピソードではオーストリア編とペトログラード編が再編集の際の追加シーン(インディがフランス軍の上官から任務の説明を受けるシーン、失敗を咎められるシーン)によってスムーズに繋がっているため、バルセロナ編の入り込む余地がなく、時代設定に矛盾が生じてしまっている。劇中では何年何月かを示す描写が一切ないため、タイムラインの変更がなされたと考えるべきだろう(これはチャプター16、17 などでも同様のことが起こっている)。

オーストリア編、ペトログラード編は共に日本でも1992年初頭に「インディ・ジョーンズ 若き日の大冒険」と称したシリーズでテレビ放映されたことがあり、ビデオ、LD-BOX、文庫本が発売されている(いずれも既に絶版)。また、チャプター13として再編集された後の作品もビデオ化されている(国内版は既に絶版)。

なお、オーストリア編とペトログラード編にそれぞれ含まれていた1990年代の老インディのセクションは再編集の際にすべてカットされており、オーストリア編とペトログラード編を繋ぐシーンが新たに追加されている。

ストーリー

1917年 3月 オーストリア Austria - March 1917

次の任務について説明を受けるため自転車でフランス情報局本部に向かっていたインディは、2人の若者が運転する車に邪魔され、脱輪してしまう。やがて目的地に到着した彼は、ここに来た目的が先ほどの2人の若者と面会することだったことを知るのだった。インディは2人との間にスパイに対する認識の相違があることを知り、少々失望する。彼はこの2人がブルボン=パルマ家の王子、グザビエとシクスタスであること、そして今回の任務が、彼らをウィーンまで護衛し、2人の義兄であるカール皇帝1世と面会させることだと知らされるのだった。カール皇帝はフランスおよびイギリスとの単独講和について交渉することを望んでいた。この動きはドイツに深刻なダメージを与え、戦争の迅速な終結に役立つことになるのだ。

駅に着いた3人は偽造入国証を与えられ、オーストリアに到着次第、シュルツという名の工作員からの接触を待てと伝えられる。そして列車上で、インディは兄弟の無神経ぶりに驚かされた。彼らは姉である女帝ツィータからの手紙を持っていたのだ。この手紙が敵に発見されれば、3人は確実にスパイ容疑で殺されてしまう。インディはシクスタスから手紙を取り上げ、即座に燃やしたのだった。

オーストリア国境に到着した3人は、検問所を無事に通過するため分かれて並んでいた。インディとグザビエは何事もなく通過することができたが、シクスタスは諜報機関に捕まり、連行されてしまう。グザビエはパニックに陥るが、インディは彼を黙らせ、無理やり列車へと連れて行くのだった。やがて列車が検問所から離れ始めたとき、シスクスタスが車内に現れ、再び彼らと合流する。しかし、諜報機関が彼に何らかの疑いを抱いていることは間違いなく、インディは彼らが3人を尾行するためにわざと逃がしたのだと考えていた。

その直後、大柄な女が彼らの客室に入り、ほとんど無言のまま椅子に腰掛けた。続いて車掌が検札のため訪れるが、グザビエとシクスタスのチケットが没収されてしまう。インディは別の客室まで車掌を追い、彼を尋問した。しかし、どうやらインディたちは客室を間違えていたらしいのだ。彼が自分たちの客室に戻ると見知らぬ男が1人で座っており、兄弟の姿は既になかった。インディは男に殴りかかり、男は乱入してきたインディを暴漢と勘違いする。だが、男は葉巻を捜していただけだった。インディは自分が間違った客室にいること気づくと、男に謝罪し、正しい客室へと戻るのだった。

3人はウィーン郊外で列車を降り、シュルツの接触を待つ。そこに先ほどの大柄な女が現れ、自分がシュルツだと名乗るのだった。彼女は3人に休暇中のオーストリア人を偽装する新しい身分証明証と車を与え、ウィーン市内のある住所を教えると、そこへ行き、「フレデリックの友人」を名乗るよう指示する。やがて彼らはその住所に到着するが、そこでは警察隊が死体を運び出しているところだった。警官は彼らにスパイ組織を壊滅させたところだと説明する。彼らがその場を離れようとすると、謎の男が車内に侵入し、運転するよう告げるのだった。

だが、この一部始終は威嚇的な容姿のプロシア人によって監視されていた。彼はフレデリックの友人、マックスである自己紹介し、3人を喫茶店へと連れて行くと、そこに待機していた2人の男に引き渡す。インディは一連の成り行きに疑いを抱いていた。そしてマックスは去っていくが、3人はその後を追う。彼らは車で郊外の狩猟小屋まで連れて行かれ、その地下でついにカール皇帝と面会したのだった。

カールは外部大臣のチェルニン伯爵を呼びつけ、交渉を開始させた。グザビエとシクスタスは彼らに、フランスおよびイギリスが平和を望んでいることを告げ、それに関する3つ譲歩について説明する。(1)オーストリアはフランスの領土所有権に関する主張を指示しなければならない。(2)オーストリアはベルギーの主権を承認しなければならない。(3)オーストリアはセルビアに主権を委譲しなければならない。この提案にチェルニンは懐疑的だった。彼はカイゼルがこれらを反逆行為として見なすだろうと考えていたのだ。彼らはドイツとの同盟を破棄することと戦争を続けることとの間でバランスを取らなければならない。だが同時に、カールはオーストリア最後の皇帝となることを望んでいなかったのだ。伯爵は受諾を示す親書の草案を作成するが、彼の文章は漠然とした内容でしかなった。チェルニン曰く、この交渉の内容がカイゼルの知るところとなれば、彼らは地位を追われることになるというのだ。カールは疑念を払拭し切れぬまま親書に署名する。そして翌日、3人が立ち去る準備をしていると、カールはインディに別の手紙を差し出した。カールは要求に応じ、平和を求めていたのである。

ウィーンに戻った彼らは、マックスが殺害されている現場を目撃することになる。さらに彼らはプロシア人の暴漢から奇襲を受け、屋根や路地で追撃戦を繰り広げた後、下水道へと逃げ込んだ。3人はなんとか列車にたどり着くが、そこで新たな難問に直面する。彼らは国境を通過する際に必要となる新しい身分証明証を持っておらず、服もオーストリア兵のままだったのだ。オーストリア・スイス国境の直前の終着点で、列車はプロシア人による捜索を受けるが、3人は発見されることを避けるため、女性用バスルームに隠れていた。そしてインディは列車が続いていることを利用し、諜報機関の2人を罠にはめることに成功する。また、彼はグザビエとシクスタスを衣装で飾り、検問所を通過して親書をフランスへ届けるよう指示するのだった。兄弟はちょうど諜報機関のエージェントたちが意識を取り戻し、警報を鳴らしたときにが検問所を通過する。一方、インディは列車の先頭に向かって国境を越えようとし、何とかスイス領内に入り込むことに成功した。彼はスイス領内で即座にオーストリアの脱走兵であると主張し、保護施設へと送られる。インディはプロシア人に向かって微笑み、安全に連行されたのだった。

1917年 6月 ペトログラード Petrograd - June 1917

民衆の信念に反し、共産主義者たちはロシア皇帝を打倒しなかった。皇帝はその年の初めに、飢えたロシアの大衆によって倒されたのである。クリンスキー率いる州政府は、どのような政府を構築するべきかを決定しようとしていたが、人々は民主主義に傾倒していたのだ。だが、ウラジミール・イリイチ・レーニンの追従者たちはその数を増しており、彼らは共産主義の政府を求めていた。レーニンが権力の座に就けば、ロシアは戦争から手を引くだろう。そうなればドイツはすべての兵をヨーロッパ戦線に投入し、迅速にフランスへと侵攻することになる。インディがペトログラードのフランス大使館に配属させられた理由も、まさにこれだった。彼の任務は、フランス情報局の他のメンバーたちを支援し、ボルシェビキの活動時期を特定することである。彼はペトログラードで、政治的理念に激しい情熱を持った地元の学生たちと交流することになる。

1917年 7月 ペトログラード Petrograd - July 1917

インディは大使館の地下深くに潜り、暗号解読や翻訳の仕事を行っていたが、実際には外でフィールド・ワークを行っていることの方が多かった。彼はボルシェビキがすぐにも動き出すという同僚のブロッサールの分析に反対の姿勢をとる。インディは、ボルシェビキが深刻な脅威となるには、まだ規模が小さすぎると考えていたのだ。ある日、声明文の解読を行っていたインディは、自分に対する警告書を発見し、2人の友人、ロシア軍の逃亡兵であるセルゲイと、イレーナに会いに行く。ちょうどそのとき両者はデモ行進を行っていた。インディは彼らに中止するよう警告するが、理由を告げることができない。だが、セルゲイはインディの忠告に従い、デモを取りやめるのだった。

その後、フランス大使が情報局のスタッフを招集し、会合を行った。彼は州政府が完全に宙に浮いた状態であると考えており、2週間以内に暴動が起こるだろうと予想しているのだ。レーニンが権力を握れば、ロシアが戦争から撤退するという脅威が現実のものとなる。大使と州政府は手に入る限りの情報を求めるのだった。その後、インディは街周辺を散策し、ビラを集めていた。そして晩になると、彼はセルゲイと他の友人たちと会い、情報交換を行う。彼らの1人、ボリスは大使館で行われた脱走兵の一斉検挙の話をするが、インディはボルシェビキの会合がどうなっているかは尋ねなかった。その後、インディは大使館に戻り、残りの時間をビラの分析に充てるのだった。

翌日、インディは再び友人たちと会う。イレーナの友人の1人ローザは、インディに想いを寄せていた。彼女はその晩にインディをモーツァルトのリサイタルへと誘うが、2人が劇場に着くと、リサイタルは中止となっていた。仕方なく彼らは街中を散歩し、最終的にインディのアパートへと戻る。するとそこにはセルゲイたちが集まっており、密かにインディのための誕生日パーティを準備していたのである。彼らはケーキを切りながら、資本主義と共産主義の本質に関する議論を交わし合い、その後、インディを連れてレーニンの講演を聴きに行く。その集会でレーニンは熱狂的聴衆を前に戦争を非難した。そして講演が終わり、人々がホールから去っていくとき、インディは2人の人物が革命を起こすタイミングについて議論しているのを耳にするのだった。

インディは詫びを入れて友人たちと別れ、ボルシェビキの本部に忍び込む。彼は印刷所を詮索し、労働者に隆起を呼びかけるビラを発見するが、そこに日付までは記載されていなかった。彼は2人の守衛に捕まりそうになるが、なんとか逃走することに成功し、大使館へと戻るのだった。大使館の地下でインディはブロッサールと協議する。ブロッサールは鉄鋼業労働者が加入の準備をしているときにボルシェビキが行動を起こすと主張するが、インディはその意見に反対だった。

インディが夜明けに帰宅すると、そこにはローザが彼の帰りを待っていた。彼女はインディに愛を告白するが、彼はお世辞を言い、自分は同じような感情を抱いていないと告げる。このときローザは彼に、セルゲイがこの日、鉄鋼業労働者との話し合いに行くことを教えるのだった。インディはセルゲイと対峙する。彼は今後48時間の間に、過去数週間に開かれた以上の会合が計画されることを知っていた。インディは革命が起こっているかのと問いただす。セルゲイはインディの立場を理解していたが、革命が行われることについては否定するのだった。レーニンがフィンランドでの休暇のためロシアを離れており、セルゲイは指導者不在の間にどうして革命を起こせるのかと問い返す。また、彼の説明によれば、ロシア人の大部分がまだ革命を受け入れる準備を整えていないというのだ。

この日遅く、状況評価を行うためフランス大使が会合を招集した。インディはレーニンが国外にいることを参加者たちに告げ、ブロッサールの主張を論破する。そしてちょうどインディが話したばかりの内容を裏付ける報告が到着した。大使は感動し、満足する。そして数時間後、インディとブロッサールは地下から大使の緊急執務室に召集された。1時間前に暴動が起こったというのである。2人が到着すると、都市全体からたくさんの報告が寄せられていた。橋が封鎖され、レーニンがフィンランドから帰国し、トロツキーが群集に向けて演説を行っているのだ。インディは電話係となり、野外の諜報員からの報告を受け取るよう命じられる。彼はセルゲイが鉄鋼業労働者を扇動したという報告を受け、彼が嘘をついたことに激怒するのだった。また、他の報告によると、レーニンの帰国はトロツキーが群集を沈めるのを助けるためだという。彼らは群集に対し、まだ革命の時ではないと告げていたのだ。さらに別の報告によると、州政府を支持するコサック人たちがデモ行進に対して攻撃する準備を行っているという。しかし、群集はボルシェビキの指導者たちに従っており、もはや虐殺は避けられない状況だった。

インディはセルゲイのもとへと急ぎ、攻撃のことを警告するが、彼は耳を貸さなかった。うんざりしたインディは家へ向かい、ローザと会う。そして彼が起こったことをすべてローザに伝えると、彼女は自らセルゲイを説得すると告げるのだった。インディは彼女について行き、その途中、コサック人の狙撃兵が屋根に並んでいるのを目撃する。やがて2人は広場に達し、大声で警告するが、それと同時に狙撃が開始されるのだった。セイルゲイは最初の標的の1人となり、泣き叫ぶイレーナの腕の中で息絶える。この日、総数にして400名の命が失われた。結局レーニンは国外に逃亡し、革命は10月の終わりまで起こらなかったのである。

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